第3047回 例会
「厚木の明治・大正・昭和を生きた作家『和田 傅』」

担当:和田勝美君
講師:あつぎ郷土博物館 学芸員 大塚真由美様

 

講師:あつぎ郷土博物館 学芸員 大塚真由美様

 和田は、明治33(1900)年、愛甲郡南毛利村恩名の地主の家の長男、跡取り息子として生まれました。昭和60 (1985)年に他界するまで、勉学と修行の東京生活15年余りをのぞけば、人生のほとんどを厚木に暮らし、眼前 に広がる農村風景とそこに暮らす人々を描き続けました。

 かつては、昭和を代表する農民文学作家、厚木市名誉市民第一号としてその名は広く知られるところでした が、近年その著作は全て絶版、読むことすら容易ではありません。時代にともなう人々の暮らしや心の変化は、 和田を少し遠いところに押しやってしまったようです。

 和田の作家デビューからちょうど100年の今年、和田という人物と著作の数々を振り返ると、新しく見えて くるものがたくさんありました。

 戦前戦後、時代の変遷とともにその主張は変わりますが、作品に込められた農民に寄せる思い、幸せを願う 気持ちは一貫したものでした。

 和田の人生は激動の時代そのものであり、むらの様子や人々の喜怒哀楽が生々しく描き出された作品は、厚木の地域史としても、先人たちの心の記憶としても大変に価値のあるものです。

 過去を知ることが未来を生きることに繋がるならば、私たちがよりよく生きるための要石となる存在が、100年前から相模野のむらと暮らしと人々を描き続けた和田の作品ではないでしょうか。

 先人がこの大地に連綿と築き上げ、そして今度は私たちが未来につなぐ。皆様は、厚木の未来を牽引していらっしゃる方々です。どうぞこの機会に、和田傳その人と作品に、そして厚木の来し方行く末に思いを寄せていただければ幸いでございます。

 

クラブ会報・IT委員会 2023年 11月 14日 火曜日 | | 例会