第2700回 例会 卓話「出版の未来、書店の未来」
担当:石村哲也君
2015年「紙出版物の推定販売額」は、2014年比5.3%減の1兆5220億円だった。減少率は1950年に調査を始めてから過去最大。とくに稼ぎ頭の雑誌の落ち込みが深刻で、出版市場は底入れの兆しが見えていない。前年からの1年間で850億円の売上を失った。紙出版物が前年割れとなるのは11年連続。減少率は14年の4.5%減を上回り、過去最大だ。書籍は240万部を超える大ヒット作となった又吉直樹氏の「火花」などに代表される文芸書が比較的好調で前年比98.3%の7419億円にとどまったが、雑誌は同91.6%の7801億円と大きく落ち込んだ。雑誌販売衰退に歯止めがかからない状態だ。市場のピークは1996年の2兆6563億円で、その年の市場規模に比べると4割以上落ち込んだことになる。一方、電子出版の市場規模は1502億円で、2014年比131.3%と大きな伸びを示した。
1999年から 2015年までに 8,808軒の書店が減少し2015年現在134,88店。17年間の減少平均を出すと、518件になります。実際の書店の数はもっと少ないといわれています。本部や営業所、外商のみの本屋も含んだ件数になります。とりわけ、昔は本屋として営業していたけど、今は店舗としては営業せず、近辺の小学校や中学校に教科書のみを収めているというケースがあります。これが外商のみの本屋です。実際にお店として開店していませんので、私たちの目にふれることはありません。ですので、実際にお店があって本が並んでいる、つまり「店売している書店」は、もっと少なくなります。10,800件前後と言われている。
流通を担っているのは出版社、出版取次ぎと言われる卸し、書店の3者だが、それらすべてで経営環境が厳しくなっている。書店の閉店が相次いでおり売上減、残る書店も売上が減っておりそして、本の返品率は4割に達するとされる。本を返品される出版社、返品する際の梱包や物流費用が書店、出版取次ぎの収益を圧迫している。
2015年6月には、取り次ぎ4位の栗田出版販売が法的整理に追い込まれ、今年(2016年)2月業界3位の大阪屋と経営統合。今年3月にはまた業界5位の太洋社が自己破産を申請した。このような状況下、1位の日本出版販売(ニッパン)と2位のトーハンも減収基調に歯止めがかかっていない。
出版業界、なかでも雑誌の不況は、なによりもスポンサーの減少が大きい。「雑誌が売れない」「発行部数が減る」、ゆえに「広告出稿が減る」。「広告収入が減った」出版社は「雑誌を廃刊せざるを得ない」という"負のスパイラル"が2000年以降続いている。