第2703回 例会「トリリエント・センサー社会と変化対応」
担当:滝澤 勇君講師:成蹊大学名誉教授 日本大学商学部教授 相原 修様
講師:成蹊大学名誉教授 日本大学商学部教授 相原 修様
1 マーケティングとは
マーケティングは、アメリカで生まれ、現在は世界中の企業で使われている考え方です。言葉からも分かるように、マーケットすなわち市場に関係する学問です。市場については経済学でも研究しています。市場において、売り手(供給者)と買い手(需要者)がどのように行動するかについてミクロ経済学で研究し、国民経済全体の動きをマクロ経済学で分析しています。ところがマーケティングの場合は、現在存在している市場について考えるだけでなく、今は存在しない市場を創っていくという視点が入ってきます。昔はCDを買って音楽を聞いていたのに、今ではネットからダウンロードすることが当たり前になってきています。今は、誰もが使っているスマートフォン(スマホ)は、20世紀にはありませんでした。
2 情報革命の進展とトリリエント・センサー社会
大型コンピュータが出現した当時は、プログラミング言語を学ばないと動かせませんでした。1970年代にパソコンが生まれましたが、これも当初はベーシックなどのプログラムを学ぶことが求められました。しかしソフトが充実し、だれでも使えるようになり、そのパソコンが1990年半ばにインターネットに簡単に接続することができるようになりました。今後はパソコンやスマホだけでなく、家電や工業機器、自動車、ビルや家庭、それに時計、指輪、メガネ、コンタクトレンズ、服や靴など、身に着けられるものにまで広がっていきます。これは、Internet of Things (IoT)「モノのインターネット」と呼ばれていますが、今後はそれらの「接続機能を持つスマート製品」が増大していくことで、従来の業界構造や競争のあり方が大きく変容していくでしょう。さらに最近ではトリリエント・センサー社会という言葉も生まれています。トリリオン(Trillion)とは1兆という意味で、毎年1兆個を上回るセンサーを活用し、社会に膨大なセンサーネットワークを張り巡らせることにより、地球規模で社会問題の解決に活用しようというものです。
3 第4の消費、シェアリング・エコノミー
消費者のライフスタイルも時代とともに変わってきています。豊かになった日本では物を買えば幸せになれる時代は終わり、物でない何によって幸せになれるかを、多くの人が考え始めています。そのなかで注目されるものにシェアリング・エコノミーがあります。個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスが急増しています。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要ですが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができます。このように情報革命が進展することで、消費のあり方にも大きな変化が起きており、変化に対応する柔らかな考え方を育成することが重要になります。