第2792回 例会 卓話「教科用図書」~教科書が届くまで~

担当:石村哲也君

 教科書は正式には「教科用図書」といい、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校などの学校で教科を教える中心的な教材として使われる児童生徒用の図書のことです。

 「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教育課程の構成に応じて組織排列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であり、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名義を有するもの」とされています。
 全ての児童生徒は、教科書を用いて学習する必要があります。教科書には、前述のとおり文部科学省の検定を経た教科書(文部科学省検定済教科書)と、文部科学省が著作の名義を有する教科書(文部科学省著作教科書)があり、学校教育法第34条には、小学校においては、これらの教科書を使用しなければならないと定められています。この規定は、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校にも準用されています。
 なお、高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校並びに特別支援学級において、適切な教科書がないなど特別な場合には、これらの教科書以外の図書(一般図書)を教科書として使用することができます。
 現在の教科書制度は、民間の教科書発行者による教科書の著作・編集が基本となります。各発行者は、学習指導要領、教科用図書検定基準等をもとに、創意工夫を加えた図書を作成し、検定申請します。
 図書は、文部科学大臣の検定を経てはじめて、学校で教科書として使用される資格を与えられます。発行者から検定申請された申請図書は、教科書として適切であるかどうかを文部科学大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会に諮問されるとともに、文部科学省の教科書調査官による調査が行われます。審議会での専門的・学術的な審議を経て答申が行われると、文部科学大臣は、この答申に基づき検定を行います。教科書として適切か否かの審査は、教科用図書検定基準に基づいて行われます。
 検定済教科書は、通常、一種目(教科書の教科ごとに分類された単位をいう。例:小学校国語(1~6年)、中学校社会(地理的分野)、高等学校(数学1)について数種類存在するため、この中から学校で使用する一種類の教科書が決定(採択)される必要があります。採択の権限は、公立学校については、所管の教育委員会に、国・私立学校については、校長にあります。採択された教科書の需要数は、文部科学大臣に報告されます。
 文部科学大臣は、報告された教科書の需要数の集計結果に基づき、各発行者に発行すべき教科書の種類及び部数を指示します。この指示を承諾した発行者は、教科書を製造し、供給業者に依頼して各学校に供給し、供給された教科書は、児童生徒に渡され、使用されます。
 なお、国・公・私立の義務教育諸学校(小・中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の小・中学部)で使用される教科書については、全児童生徒に対し、国の負担によって無償で給与されています。

 

クラブ会報・IT委員会 2018年 5月 22日 火曜日 | | 例会